その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
ついて来て欲しいなんて、微塵も思っていないくせに。
どのタイミングで私を切り捨てるか。
きっと今日1日そのことばかりを考えていたのであろう彼とのデートを、少しでも楽しいと感じてしまった自分が嫌になる。
嫌な予感はやっぱり当たるのだ。
「つまり……?」
このまま彼の説得を最後まで聞いてもよかった。
けれど、今の時点でもうその説得を受け入れるつもりなのだから、無駄な話は早々に終わらせたほうがいい。
「つまりって?」
ゆっくりと話をして私を丸め込むつもりだったであろう彼は、小首を傾げて不思議そうな顔をした。
「30過ぎた女を振るんだもの。私があなたとの将来を考えて、諦めきれなくて泣き縋るんじゃないか。そう思ってるから、本題に入ることに慎重になってるんでしょ?」
「礼子……」
私の言葉に、彼が困惑したように表情を歪めた。