その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
II
「そういうことで、2週間後の土曜日のイベントには間に合うように仕上げてもらいたいそうだ。急だが、碓氷が中心になって取りまとめてもらいたい」
「わかりました」
説明をしていた資料から顔を上げた川口企画部長と目が合って、小さく頷く。
月曜日の朝。
私を含む企画部の社員数人が、部長に呼ばれて会議室に集まっていた。
金曜日の就業後に部長の古くからの知り合いから、野外イベントのパンフレットを作ってほしいという依頼があった。
それは地域の飲食店が出店を出店したり、野外ステージで地元の学生やダンス団体などがパフォーマンスを行う、町おこしイベントなのだそうだ。
パンフレットには、協賛店舗の広告やイベント当日のプログラム、出演団体のプロフィールなどを盛り込んで欲しいと言われているらしい。
依頼主と部長の間で内容の打ち合わせはほぼ終わっているので、難しい仕事ではない。
だけど、部長にとっては古くからの知り合いから頼まれた仕事なので、私に指揮をとらせてできるだけ完成度の高いものを提供したいのだ。