その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
「秋元くん、大丈夫?」
「あ、はい!」
声をかけたら、秋元くんが跳ねるようにぱっと顔を上げた。
「何か心配なことでもある?」
「あ、えっと……ちょうど同じ日に締め切りでやらなければいけないことがあって。そっちがまだほとんど手付かずなので……」
「こっちまで手が回りそうにない?」
「いえ、そういうわけではないんですけど……」
そんなにキツい言い方をしたつもりはないのだけど、秋元くんが萎縮したように背を丸くする。
「わかったわ。じゃぁ、秋元くんの分担を少し減らしましょう。秋元くんはこのページと……あとは、折り込みで挟むチラシの作成をお願い。それ以外は私な引き受ける。この分量なら間に合いそう?」
「大丈夫だと思います」
秋元くんが力強く頷く。
この感じだと、締め切りまでにきちんとパンフレットを仕上げられそうだ。
「じゃぁ、これで解散ね。わからないことやアドバイスが必要なことがあれば、個別に持ってきて」
「わかりました」
「あ、私、これから外出してきます」
私の解散の合図と同時に、菅野さんと秋元くんが立ち上がって会議室を出て行く。