その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―




別れ話を終えたあと、彼のほうが先に席を立った。

混雑するカフェの席に取り残された私は、入口の向こうに消えていく彼の後ろ姿を最後までずっと見ていた。

ようやく彼の背中が見えなくなってから、グラスに4分の1ほど残っていたアイスコーヒーに口をつける。

氷が溶けきったそれは、薄くてほとんど水の味がした。

水みたいなアイスコーヒーを飲みながら、彼と過ごした1年半を想う。

お互い仕事が忙しくてゆっくり会える日は少なかった。

それでも、一緒にいた時間は決して薄っぺらいものではなかったはずだ。

でも、そう思っていたのは私だけだったのかな。

彼の「説得」を自ら受け入れたくせに、心の内は結構複雑だ。

意外とダメージが大きかったらしく、なかなか立ち上がる気力が起きない。

だらだらと水っぽいアイスコーヒーを啜っていると、不意に向かいの席に陰が落ちた。



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