その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―


「だいたい噂がどうとかって。そんなもん真に受けて中高生かよ。ね、碓氷さん」

「え……?」

広沢くんが突然話を振ってくるから、食べていたおにぎりが変なところに入ってむせかけた。


「大丈夫ですか?」

「ごめん、何?」

飲み物で咳き込みを抑えて返事をしたときには、もう広沢くんたちの話題は他のことに移っていた。


「聞いてなかったならいいです」

広沢くんがそう答えたとき、ずっと休みなく動いていた印刷機が止まった。

秋元くんが会話の輪から外れて印刷機をチェックしに行く。


「あ、チラシの印刷全部終わりました」

「ありがとう。早く作業終わらせちゃいましょう」

広沢くんにもらったパンはあとでいただくことにして、作業に戻る。

それから全てのパンフレットが完成したのは、夜の11時頃だった。




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