その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
澄ました顔で相槌を打つ私に、広沢くんが驚いたように目を瞬いた。
「碓氷さん、そろそろいい年ですよね。北原支店長と結婚とか考えてなかったんですか?」
「いい年って、失礼ね……」
まぁ、25歳の広沢くんには33歳の私なんていい年して結婚できてない女に見えてるんだろう。
低い声でぼやくと、広沢くんが取り繕うように小さく首を横に振った。
「いや、別に嫌味とかでは……ただ、普通だったらあぁいうシュチュエーションで涙のひとつでも見せたってよさそうなのに。厳しいのは仕事だけなのかと思ったら、プライベートでも泣かないんですね」
「あの場で泣いたとしても、何も変わらないでしょう?」
「でも、北原支店長の情には訴えられたかもしれないじゃないですか」
「訴えたとして、何か意味がある?」
冷たく問い返すと、広沢くんが困ったように苦笑いした。