その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―

II



乃々香を学童まで迎えに行って、大急ぎで病院に駆けつけたときには、美弥子のお腹の赤ちゃんは既に元気な産声をあげたあとだった。

新生児室のガラス越しに、乃々香と一緒に生まれたての赤ちゃんを眺める。

まだ赤い顔をして、スヤスヤと眠る赤ちゃんはとても可愛い。

そういえば、乃々香が生まれたときもこうしてガラス越しに彼女を眺めたっけ。

つい最近のことのような気がするけれど、年月にわたってするともう随分と前だ。

新しい命の誕生を嬉しく思うとともに、同じように小さかった姪のことを思い出して懐かしい気持ちになる。

そんな私の隣で、乃々香は初めて見る小さなその生き物を、瞬きもせずにじっと見つめていた。

しばらく赤ちゃんを見せてもらったあと、まだ休息が必要な美弥子と少しだけ面会する。


そのあとは、今夜は病院に付き添うという誠司くんだけを残して、乃々香を連れて一足先に家に帰った。


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