その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―





ダンボール箱ふたつ分にもなる、ミス広告の束は予想以上に重かった。

広沢くんとひとつずつ箱を抱えて駅に向かったけれど、ヒールを履いた足ではなかなか早く歩くことができずに途中で何度も道路に箱を下ろす。

このまま電車で持って帰るのは厳しいかもしれない。

タクシーでも拾おうかと辺りを見回していたとき、広沢くんに声をかけられた。


「碓氷さん、大丈夫ですか?」

「そうね。まだまだ、と言いたいところだけど、さすがにちょっと厳しい。タクシーでも拾おうか」

広沢くんのことは振り返らずに、重い荷物を運んで痛くなった手のひらを何度か開いたり閉じたりとする。


「そうじゃなくて……」

だけど、背後から困ったような声が聞こえてきたから、不思議に思って後ろを向いた。


「何?」

「何、じゃなくて……坂上さんに、3日で納品し直すって言ってましたけど、そんなこと可能なんですか?懇意にしてもらってる印刷会社だって、そんなに早く大量枚数は難しいんじゃ……」



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