その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
「それでも、もう一度チャンスが欲しいって坂上さんに申し出たのは広沢くんでしょ?」
弱気な声を出す広沢くんに力強く笑いかけると、彼が困ったように眉を垂れた。
「そうですけど、あまりに条件が……」
「大丈夫。3日の条件を飲んだのは私だから、そこは私が何とかしてみせる。部下が真剣に取り組んでる仕事のフォローをするのも上司の役目だから。さ、タクシー探そう」
ぽん、と肩を叩くと、広沢くんが眉を垂れたまま薄く笑った。
「予想以上に強いですね、碓氷さん」
ぽつり、と聞こえてきた声に、振り返りながら苦笑いする。
「そうね。まぁ、あなたよりは社会人経験が長いから。ただそれだけのことよ」
そう答えていたとき、向こうから空車のタクシーがやってくるのが見えた。
手を挙げて止めると、重たいダンボールをトランクに積んでもらって後部座席に先に乗り込む。
「広沢くん?」