その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



「だから仕事が終わったら、れーこさんのことご飯に誘おうと思ってたんです。そこでなんとか口説き倒して、気持ちを聞き出すとこまでが今日の計画だったんですけど……本当はもっとうまくやる予定が、北原さんの予定外の行動のせいで、焦っていろいろ早まりました」

「何を……」

「会議室でがっつくつもりはなかったのに。れーこさんのせいですから」


広沢くんがそっと手を伸ばして私の髪に触れる。

「続きは終わってからオフィスの外で」

「何言って……」

思わずカッと頬を染めて言い返そうとすると、悪戯っぽく笑った広沢くんが私を見つめてほんの少し目を細めた。


「そういうわけなんで、今日の夜は空けといてくださいね?」

「そんな勝手に……」

「頷いてくれたらドア開けます」

最初からひとつしか用意されていない選択肢に、思わず眉を寄せる。


「早くしないと、さっきの人たち戻ってきちゃいますよ?」

ニヤリとする広沢くんに急かされて仕方なく頷くと、彼の後ろでガチャリと音がして錠が開いた。

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