その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
II
「君が部下を庇いたかったという事情はわかったが、今後はこういったことのないように。まずは上の指示を仰ぎなさい」
「はい。勝手なことをして大変申し訳ありませんでした」
無表情で深々と頭を下げると、会議室を出る。
最近はやたらと謝ることが多い。
苦笑いを浮かべながら、小さく息を吐く。
広沢くんが担当していたミスのあった広告は、坂上さんとの約束通り3日で納品することができた。
元々印刷を頼んでいた会社以外に、私が今まで仕事をしてきた中でツテがある会社にいくつも当たって、何とか期日内に仕上げてくれるところを見つけることができたのだ。
けれど、やり直し分の印刷費用は全て企画部持ち。
しかも、私が部数を増やして頼んでしまったから、余計に費用がかかる。
先月も今月も、利益が上がっていたからいいようなものの……
勝手な判断をするなと上からものすごく怒られた。