その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



バレてたんだ。

そんな素振りは見せないようにデスクを離れたつもりだったのに、広沢くんはなかなか鋭い。


「いいのよ。勝手な判断をしたのは私だから。ミスのことではなくて、予算の使い方について注意を受けただけ。気にしないで」

「でも、元々は俺のせいですよね」

「広沢くんのせいとか、そういうことじゃないわ。私の立場では、謝るのも仕事のうちだから」

口元に笑みを浮かべて言いながら、広沢くんから遠ざかるように歩を速める。

そのとき、広沢くんが引き止めるように私の手首をぱっとつかんだ。


「碓氷さん、全然泣かないんですね」

「何?いきなり」

私の手首を強くつかんだ広沢くんに、真っ直ぐな目で見つめられてたじろぐ。


「俺、知ってます。碓氷さんが呼び出されたのが今回だけじゃないって。俺のミスを庇ったことで、碓氷さん、上からいろいろ怒られてますよね?」


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