その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
「若くて可愛いから、妬んでるんじゃないんですかね」
よく耳にする言いがかりとともに、企画部長達の笑い声が聞こえた。
どうしていつも、そんなふうに話が飛躍するのだろう。
ため息を零したとき、笑い声が一度途絶えた。
「そういえば今回ミスを庇った部下の男のことを、碓氷が気に入ってるって噂ですよ」
「何だよ、それ。好意を持ってる部下に媚び売りたくて、部の予算を無駄に使ってことか。それが本当なら問題だな」
続いて聞こえてきた声に、頬の筋肉が引き攣る。
私は私欲のために広沢くんのミスのサポートをしたわけじゃない。
彼の仕事を評価してのことなのに……
秦野さんのことはともかく、広沢くんに関しての言いがかりはあんまりだと思った。
今すぐにでも会議室に飛び込んで、文句を言ってやる。
憤りながら足を一歩踏み出しかけたとき、半分ほど開いた会議室のドアの隙間からよく知っている人の横顔が見えて、身体がその場で凍りついた。