その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
「北原支店長も転勤を機に別れられてよかったんじゃないですか?あんなの連れて行くより、副社長のお嬢さんとのお見合いの話を受けたほうがずっといいじゃないですか」
企画部長がそう言って、冗談交じりに笑う。
少し笑いながらその発言を受け止めていたのは、つい数週間前まで付き合っていた私の恋人だった。
別れられて、って何?
彼と私とのことは、企画部長やそのほかの上司数人に知られていたの……?
頭が混乱して、心臓が訳のわからないくらいにバクバクと音を立てていた。
企画部長たちの話を聞く彼は、私のことを少しも庇おうとはしてくれなかった。
たぶん、庇う気もなかった。
彼は、会社の上層部の人たちと相談した上で、私のことを切り捨てた……?
無情にも突きつけられた事実に、指先から身体が冷えていく。