その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
「人が真面目に告白してんのに」
「ありがとう。嬉しいよ」
俯きながらクスクス笑ってそう答えたら、広沢くんが不機嫌そうにため息を吐く。
「碓氷さん。俺が年下だからってバカにしてるでしょ。覚えててください。いつか絶対に泣かせてやるから」
そう言いながら、悔し紛れみたいに広沢くんがもう一度私を抱き寄せる。
その腕の中でクスクスと笑うふりをしながら、私はこっそり目尻に浮かぶ涙を拭いた。
そっと胸に耳を寄せると、トクトクと脈打つ広沢くんの鼓動が聞こえてくる。
心なしか少し速いように思うその音を聞きながら、私はひさしぶりに穏やかな気持ちで目を閉じた。