その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
部下の思惑

I



「碓氷さん。これ、チェックお願いします」

正面に人が立つ気配がする。

顔を上げると、広沢くんがA4サイズの用紙を一枚私の方に差し出していた。

広沢くんに頼んだ資料なんてあったかな。

それとも、彼が抱えている案件に関する相談?

疑問に思いながらそれを受け取り内容を確認する。

そこに書かれた手書きの文章を読み進めているうちに、自分の眉間に徐々にシワが寄っていくのがわかった。


「歓迎会?」

そこには、先月入社した中途採用の社員の歓迎会開催についての詳細が書かれていた。


「そうです。先月新しく入った菅野(スガノ)さんの。碓氷さんはどうしますか?」

眉根を寄せたままの私に 、広沢くんがにこりと笑いかけてくる。

彼のその言動の理由が、私には謎過ぎた。

彼が渡してきた紙には、中途採用の菅野さんの歓迎会開催日時と場所、それから出欠希望を記入する欄が設けられている。


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