その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―


「大丈夫ですよ。俺はほんとにふつーに碓氷さんのこと心配してるだけなんで。体調悪い碓氷さんちに上がり込んで変な気起こそうなんて考えてませんから」

「何言ってるのよ。私は別に……」

そんなふうに言われたら、私が自意識過剰みたいじゃない。

ただでさえ熱い顔をさらに火照らせる私の隙をついて、広沢くんがひょいと買い物袋を奪う。


「わかったら、ちゃんと着替えてあったかくして寝てください。あ、熱測りました?体温計もいちおう買ってきましたよ」

買い物袋をガサガサと漁りながら、広沢くんが部屋の奥へと勝手に入っていく。

その後ろ姿を見ていたらなんだかもうどうでもよくなってきた。

先を歩く広沢くんの後をよろよろついていくと、キッチンのカウンターに買い物袋を置いた広沢くんが、中身を出しながらきょろきょろとしていた。


「飲み物とかゼリーとか、勝手に冷蔵庫入れちゃっていいですか?」

「どうぞ、ご自由に。私、着替えてくるから」

考えるのも面倒になってきて、寝室に篭ると部屋着に着替える。



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