その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―
そのまま体の怠さに任せてベッドに倒れ込んだ私は、広沢くんのことを忘れてまたうとうとし始めていた。
「碓氷さん、もう入っていいですか?」
夢現のなかで、広沢くんの声が聞こえてきて薄っすらと目を開ける。
「碓氷さん、ちゃんと熱測りました?」
「広沢くん、まだいたの?」
「人が心配して来てるのに、やなこと言いますね。持ってるかなとは思ったんですけど、体温計も買ってきときましたよ」
「結構なお節介ね……」
「そこは、さすが仕事ができるわねって褒めるとこでしょ」
「…………」
冗談に言葉を返す気力もなくて、無表情で広沢くんを見つめ返していると、彼からかなり強引に体温計を渡された。
「何か食べます?買ってきたお粥あっためましょうか?」
「いらない」
「ゼリーもありますよ。飲むタイプのやつ」
そういえば、少し喉は渇いている。
「じゃぁ、もらうわ。あと、お水……」
本当はこんなことを広沢くんに頼むこと自体気がひけるけど……