その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―

II



数センチ開いたカーテンの隙間から差し込む光の眩しさに目を開ける。


いつもぴったりと隙間なくカーテンを閉めているはずなのに……

いや、昨日は自分でカーテンを閉めた記憶がない……


ぱっと体を起こすと、ひどい頭痛に襲われた。

そういえば私、昨夜は熱が出てろくにメイクも落とさずに寝たんだった。

ふと見ると、枕元に私が常備しているものとは違う体温計が置いてある。

少し考えて、昨夜強引に差し入れを届けに我が家に突入してきた広沢くんのことを思い出した。


寝てる間に帰ったのね、きっと。

気付かず申し訳なかった、と思いながら、体温計と並んで置いてあるスマホで時間を確かめる。

その瞬間、体中から血の気が引いた。

いつも起きている時間よりも30分以上も寝坊している。

私のマンションは会社から近いけれど、それでも10分で用意して家を出なければ始業時間に間に合わない。

焦って起き上がったら、まだ足と体がふらついていてよろけた。



< 97 / 344 >

この作品をシェア

pagetop