極上御曹司のヘタレな盲愛
そうして。
私が兄妹や幼馴染と過ごす時間は急激に減った。
私は出来るだけ4人を避けて過ごす事で自分を守ろうとしたのだ。


中等部や高等部の頃は、家で花蓮とも光輝とも親しく話す事もしなくなった。


似鳥家、水島家、藤井家の三家族で行く毎年恒例の夏の家族旅行にも私だけ行かなくなった。


大学3年生で就職を考える時、私は勿論、家を出て遠い所で就職する事を希望した。
やっと『双子の残念な方』というレッテルを外して誰も知らない所で生きていけると思っていたのに。


普段、私の事なんて期待もせず気にもしていないと思っていた父が、私の就職活動に猛烈に反対した。
『ニタドリ』に就職する事を強く望まれ、最後には母にも泣き落とされ、私はとうとう根負けして『ニタドリ』に花蓮とともに就職する事になった。


『ニタドリ』には花蓮の友人も何人か同期で入社した。
そのうちの一人が会社で、学生時代に私が『双子の残念な方』と呼ばれていた事を噂で広めたので、新入社員研修も終わり庶務係に配属が決まる頃には、私は陰で『社長の娘の残念な方』と呼ばれる事になった。


しかも、なぜか『ニタドリ』には悠太と、あの大河が就職していた。
私はずっと4人を避け続けていたので、2人が大学を卒業してどこに就職したのか知らなかったし、2人とも名のある家の御曹司なので、そちらの方に就職したのだろうと勝手に思い込んでいたのだった。


会社で、悠太は直属の上司、花蓮も同じ課なので避ける事は出来ないが、光輝、大河とは仕事で関わる事も滅多にないので、出来るだけ顔を合わせる事の無いように入社以来ずっと気を配ってきた。

特に大河の事は徹底的に避け続けた。

顔を合わせる事が無いように。
姿を見る事も無いように。
声を聞くことすら無いように。

でもどんなに気をつけて避けていても同じ会社。
たまに出会い頭の事故のように会ってしまうんだ。

そうすると大河からは、さっきのように子供の頃から変わらない意地悪な言葉が降ってくる。

私がどんなに無視を決め込んでもしつこくしつこく!

子供の頃は意地悪ばかりするのでただ『苦手』だと思っていたが。

大人になっても会うたびに憎らしい事を言ってくる大河の事が、今では『大嫌い』にまでなっていた。


それなのに。


学生の頃と同様、会社にも大河のフアンは沢山いて、大河が私に何か話しているのを見つけると『(社長の娘の)残念な方』のクセに大河と仲良く話していて生意気!ってなるようだ。

営業2課のアシスタントのお姉様方も例外なく大河の大ファンで、こんな形でも大河に構われる私が目障りでしょうがないらしい。
出来る事なら代わって欲しいのに!


営業のお姉様方のクスクス笑いを背中に聞きながら、私は辛い過去まで思い出して、泣きそうになるのを堪えていた。

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