極上御曹司のヘタレな盲愛
昨日…。

桃を医務室に連れて行き、治療を終えた桃と別れた後、俺は光輝と悠太に後を任せてしまった第3会議室に向かった。

そっと会議室に入ると、例の女達と光輝、悠太の他に人事課長がいた。
2課の営業アシの3人は、全員今月末で辞めると言う。まあ…予定通りだ。
同僚に揃ってあんな事を言われては恥ずかしくて会社には居られないだろう。
周りにいた女性社員達によって不名誉な噂は広められるだろうし。
自業自得だ…。同情の余地はない。

斎藤紫織を除く受付の奴らは、悠太から厳重注意を受けてそのまま仕事に戻った。
まあ…2課のアシ達とは違って、仕事はちゃんとしているんだろうから、そうだろうな。
普段優しい悠太が、鬼のような顔で注意するのでビビって泣いていた。
もう二度と桃に絡んでくることも無いだろう。


そして…斎藤紫織。

放心状態で一番端に座っていた。
その辺の馬鹿女達と言われた同僚達は、あえて彼女に一切目を向ける事はない。

馬鹿な女…。
最後の桃への呪いの言葉さえ無ければ、父親の会社…潰す事もなかったのに。

いや、諦めの悪いあの父親…やはり父娘共々遅かれ早かれ潰しておかなければ後々鬱陶しい事になるだろう。
また桃に魔の手が伸びても厄介だ。

人事課長から解雇になる旨を告げられた斎藤紫織は、そのまま家に帰される事になった。

だが…それで終わりではない…。


第3会議室を出た後、俺は航我に電話をし朝からの顛末を話した。

『ふうん…。そういう事だったんだね。あの女、しつこそうだからなぁ』

「ST製薬はどうなってる?」

『ああ、順調に炎上してるよ。警察もそのうち動き出すだろう』

俺達3兄弟の中で一番優しい顔をしているが、一番性格がキツイのは航我だと思う。
そんな姿、絶対に桃には見せないが…。

俺は、斎藤紫織の桃への最後の呪いの言葉を航我に告げた。

『そういう事なら…本当に父娘共々日本に居させないようにしなきゃだね…。
任せておいて、なんとかするよ。息の根を止める覚悟でいくから。
元々、俺もあの父娘…反吐がでるくらい大嫌いだし…。学生の頃、俺は兄さんよりずっと近くで桃ちゃんを見てきたんだ…。あの女がどれだけ桃ちゃんに酷い事をしてきたかよく知ってる。あれが、会社に入ってからもずっと続いていたんだね…。
あの女如きが桃ちゃんを傷つけるなんて許さない!
何が幸せになんてさせるもんか、だ…!
絶対に俺が桃ちゃんを幸せにしてやる!
あんな奴ら、地獄に落としてやる!』

鼻息荒く叫ぶ航我。

「いや、待て待て!桃を幸せにするのは俺だから!航我!何度も言うけど、桃は俺のものだからな!」

幼い頃から…ニタドリの桃は俺のものだと、兄貴にも航我にも言い続けてきた。
なのに、航我の初恋はやっぱり桃で…。
奴は学生時代、桃と同じテニス部に入ってどうにかしようと思ったらしいが、どんなに頑張っても超鈍感な桃には弟としか見て貰えず、泣く泣く?諦めたようで、祖父の秘書をしている今では俺の桃への思いを応援してくれている。

未だに桃のために…と言えば、大抵の用件は聞いてすぐに動いてくれる。
水島の男はホント桃に弱いんだよ。


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