極上御曹司のヘタレな盲愛
兄弟で暫しアホな張り合いをした後…「頼んだぞ」と電話を切った。


桃と一緒に帰って夕食を家で食べ、風呂に湯をはりに行くタイミングで航我からメールが入った。

斎藤親子が夜の便で欧州方面に出国したという知らせだった。
ST製薬の社長に、今回の騒動を水島が抑える代わりに、娘と共に今後最低でも5年間は日本に帰らないと約束させたと…。
他にも色々取引があったようだが、相変わらず航我の仕事は早い。

斎藤親子が出国したと知り、俺は心からホッとした。


桃と結ばれて…本当に幸せだった。
入籍できて…桃とこれから過ごしていく幸せな日々しか想像できなかった。


入籍した大事な日だというのに…俺は夕方から外せない会議が他社であり、桃と一緒に帰る事が出来なかった。

今思うと…会議など他人に任せて…一緒に帰ればよかったんだ…。何より大切なのは桃なのに…。

斎藤親子が日本を出たと…前日に航我に聞いていたせいでどこか安心していた。

一緒に帰れない事を桃に言うと、美波ちゃんと恵利ちゃんを食事に誘って入籍の報告をすると言う。

お互いの家族や親戚には夏期休暇中に報告しようと桃と話し合っていた。

仲の良い同僚には夏期休暇に入る前にちゃんと報告しておきたいのだろう。

入籍した日の夜に、一人で晩飯を食わせるよりよっぽどいい。
反対するわけもない。

でも、昨日の事もある。

心配するなと笑って手を振る桃の顔を見ていたら一抹の不安が胸をよぎり、桃と別れた後でまた航我に電話を入れた。


斎藤親子…特に娘が出国した事を、念の為もう一度確認して欲しいと伝えた後、定時後からいつも祖父についている水島のボディーガードを1人、桃にわからないようにつける事を頼んだ。

光輝経由で人事からコッソリ入手して、営業アシの3人と、念のため斎藤紫織の顔写真も送っておいた。
個人情報なんて知るもんか。

それでも妙な胸騒ぎは治らなかった。
今思うと、虫の知らせというやつだったんだろうか…。


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