極上御曹司のヘタレな盲愛
商業施設の中を走り、エントランスへ。
エントランスを出て、駅から伸びる歩道橋へ…。
歩道橋の階段の下に大勢の人集りが出来ている事に気がついた。
嫌な予感…どうか…外れてくれ!
人集りをかき分けるようにして歩道橋の下まで来ると…。
そこには航我と…航我の腕の中に…真っ白な顔が血に塗れて…グッタリとして目を閉じた桃…。
まるで…水の中にいるようにうまく息が吸えなかった…。
何も聞こえず…自分の荒い息遣いだけが響いて酷く耳障りだった…。
全てがスローモーションのように…ノロノロと…もがくように2人の元に近づく…。
俺に気づいた航我が叫び、俺はようやく我に返った。
「兄さん!ごめん!下で受け止めたんだけど、守りきれなかった!階段の上から突き落とされたんだ!今、救急車を呼んでもらったから…」
見ると航我も肘などに擦り傷がある。
桃を必死で受け止めてくれたんだろう…。
「航我、ありがとう…。代わるよ…」
俺は着ていた上着を桃に掛け、航我に代わって意識のない桃の体を支えた。
「桃…。桃…」
震えそうになる声で、何度も何度も呼びかけるけれど…桃が応えることはない。
その時…。
「航我さん!捕まえました!」
水島で何度か見た事のあるボディーガードが、坊主頭の小柄な少年の腕を後ろ手に取り、ズルズルと引きずるようにしてきた。
「斉藤……紫織…」
坊主頭の少年だと思ったが…。
それは、長かった髪をバッサリと切って短く刈り込み、少年のような格好をして化粧っ気もなく、ギラギラと目ばかりを光らせた斎藤紫織だった。
俺と目が合うと…斎藤紫織は唇の端を上げ、ニッコリと微笑んだ。
次に奴は桃の血塗れの姿に目を移すと…。
「…ふっ……ふふふ……あはは……ねぇ、死んじゃった?…うふふ…いい気になってるから。ザマァ見ろよ!あぁ、可笑しい!あぁ、スッキリした!」
と嘲笑い続けた。
周りがシンと静まる。
「私!その人が階段の上で、その女の人の背中を押すのを見ました!」
「俺も!そいつが突き飛ばすのを見たよ!」
周りの人集りの中から声が上がる。
その時サイレンとともに先にパトカー数台、直後に救急車がようやく到着した。
警官が数名「どうしました?」と走ってくる。
航我が状況を説明しだすと、目撃者も次々と名乗り出た。
斎藤紫織は警官に引き渡されたが、まだしつこく嘲笑っている。
救急隊員が担架を持ってこちらに駆け寄ってくる。
「お連れの方ですか?」と訊かれ「夫です」と告げる。
するとそれを耳にしたのか、斎藤紫織がようやく笑うのをやめて…。
「嘘よ!イヤーーーッ!」
と叫んだ…。
が…あんな奴…これ以上声を聞くのも目に入れるのも耐えられなかった…。
エントランスを出て、駅から伸びる歩道橋へ…。
歩道橋の階段の下に大勢の人集りが出来ている事に気がついた。
嫌な予感…どうか…外れてくれ!
人集りをかき分けるようにして歩道橋の下まで来ると…。
そこには航我と…航我の腕の中に…真っ白な顔が血に塗れて…グッタリとして目を閉じた桃…。
まるで…水の中にいるようにうまく息が吸えなかった…。
何も聞こえず…自分の荒い息遣いだけが響いて酷く耳障りだった…。
全てがスローモーションのように…ノロノロと…もがくように2人の元に近づく…。
俺に気づいた航我が叫び、俺はようやく我に返った。
「兄さん!ごめん!下で受け止めたんだけど、守りきれなかった!階段の上から突き落とされたんだ!今、救急車を呼んでもらったから…」
見ると航我も肘などに擦り傷がある。
桃を必死で受け止めてくれたんだろう…。
「航我、ありがとう…。代わるよ…」
俺は着ていた上着を桃に掛け、航我に代わって意識のない桃の体を支えた。
「桃…。桃…」
震えそうになる声で、何度も何度も呼びかけるけれど…桃が応えることはない。
その時…。
「航我さん!捕まえました!」
水島で何度か見た事のあるボディーガードが、坊主頭の小柄な少年の腕を後ろ手に取り、ズルズルと引きずるようにしてきた。
「斉藤……紫織…」
坊主頭の少年だと思ったが…。
それは、長かった髪をバッサリと切って短く刈り込み、少年のような格好をして化粧っ気もなく、ギラギラと目ばかりを光らせた斎藤紫織だった。
俺と目が合うと…斎藤紫織は唇の端を上げ、ニッコリと微笑んだ。
次に奴は桃の血塗れの姿に目を移すと…。
「…ふっ……ふふふ……あはは……ねぇ、死んじゃった?…うふふ…いい気になってるから。ザマァ見ろよ!あぁ、可笑しい!あぁ、スッキリした!」
と嘲笑い続けた。
周りがシンと静まる。
「私!その人が階段の上で、その女の人の背中を押すのを見ました!」
「俺も!そいつが突き飛ばすのを見たよ!」
周りの人集りの中から声が上がる。
その時サイレンとともに先にパトカー数台、直後に救急車がようやく到着した。
警官が数名「どうしました?」と走ってくる。
航我が状況を説明しだすと、目撃者も次々と名乗り出た。
斎藤紫織は警官に引き渡されたが、まだしつこく嘲笑っている。
救急隊員が担架を持ってこちらに駆け寄ってくる。
「お連れの方ですか?」と訊かれ「夫です」と告げる。
するとそれを耳にしたのか、斎藤紫織がようやく笑うのをやめて…。
「嘘よ!イヤーーーッ!」
と叫んだ…。
が…あんな奴…これ以上声を聞くのも目に入れるのも耐えられなかった…。