極上御曹司のヘタレな盲愛
「…まったく…人の…知らないで…」
微かに誰かの声が聞こえ、唇にフワリと温かく柔らかなものが触れた気がして、私はボンヤリと目を開いた。
ん…?ここ…どこだっけ?
ようやく目が覚め意識がはっきりしてくると、目の前に腰を屈めて眉間に皺を寄せ、私の事を見下ろす大河の端正な顔があって、飛び起きた!
やばい!私、眠っちゃってた!保養所に着いちゃった!
慌てて車内を見回すも、他のみんなの姿はすでになく、私を取り囲んでいた大量のバーベキューの食材も運び出されていた。
「とっとと起きろ!この寝坊助!」
そんなに怒るんだったらもっと早くに起こしてくれればいいのに!ホント大嫌い!
私の膝の上のスイカをヒョイっと取った大河の後に続き、私も荷物を持って車から降りようとしたけれど…。
「どうした?降りないのか?」
「………」
大河は何かピンときたのか、フッと意地悪く微笑むと、私の足を軽く指で突いた。
「んんーー‼︎」
大きなスイカをずっと膝の上にのせていた私の足は、見事に痺れてしまっていた。
手でブロックを必死にしたが、かいくぐってくる大河の攻撃が、足にヒットする度に悶絶した。
本当にこの男、意地悪だ!大っ嫌い!
クックックッと笑いが止まらない大河に続いて、ようやく足の痺れのとれた私も車を降りた。
降りる時にそっと車のドアから外を窺う。
「もう誰もいねぇよ。降ろした食材持って、みんなとっくにバーベキュー場に行った」
ホッと胸を撫で下ろす私を見て…。
「なんでお前はそんなにいつも他人の目ばっか気にしてるんだよ」
と大河が言った。
誰のせいだと思ってるのよ!
小さい頃からいつも私と花蓮を差別して、私の劣等感を煽っているのは大河じゃない!
ずっとずっと『双子の残念な方』『社長の娘の残念な方』って言われ続けていたら、他人の目を気にせずになんていられないよ。
いつも自信満々で俺様な大河には私の気持ちなんて一生わからない…。
一気に落ち込んだが気を取り直し、私は荷物を持ってフロントの方に歩き出そうとした。
この男からとにかく早く離れよう…。
だけど。
「ちょっと待った!これ手伝え」
大河は私の腕をとり、手に持ったスイカと足元のフルーツが入った袋を指差した。
「川に持っていくの?」
と私が訊くと、大河は頷く。
保養所の裏手は渓谷のようになっていて、流れる川はいわゆる清流で、魚も釣れるし森林浴にもいい。
昔から私達は夏にここに来ると、川に下りてスイカなどのフルーツを川に浸けておいて冷やして食べていた。
これ以上大河と2人でいるのは嫌だったがしょうがない。
いつもスイカを冷やしておく場所まで来ると、大河はデニムパンツの裾を膝までまくり、ザブザブと川に入っていき「冷てぇ!」と言いながら、川に刺さっていた杭にスイカのネットを引っ掛け、私が渡したフルーツの入った袋も川に沈めた。
「その杭、まだ残っていたのね」
「ああ、確かお前が初等部の頃、光輝と悠太と俺の3人であの杭を埋めたんだったよな」
「うん」
「お前がフルーツを川に浸けておいたら流されて、食後のデザートが無くなったって大泣きしてたからなぁ。ホント鈍臭い…」
思い出した…。
川から上がってきた大河に荷物の中から出したタオルを渡す。
「サンキュー」
と屈託無く笑った大河の顔が、子供の頃の思い出とダブってなんだか変な感じがした。
「そろそろ行かないと…」
バーベキューの下拵えをしている美波先輩と恵利ちゃんを、早く行って手伝わなくっちゃ。
微かに誰かの声が聞こえ、唇にフワリと温かく柔らかなものが触れた気がして、私はボンヤリと目を開いた。
ん…?ここ…どこだっけ?
ようやく目が覚め意識がはっきりしてくると、目の前に腰を屈めて眉間に皺を寄せ、私の事を見下ろす大河の端正な顔があって、飛び起きた!
やばい!私、眠っちゃってた!保養所に着いちゃった!
慌てて車内を見回すも、他のみんなの姿はすでになく、私を取り囲んでいた大量のバーベキューの食材も運び出されていた。
「とっとと起きろ!この寝坊助!」
そんなに怒るんだったらもっと早くに起こしてくれればいいのに!ホント大嫌い!
私の膝の上のスイカをヒョイっと取った大河の後に続き、私も荷物を持って車から降りようとしたけれど…。
「どうした?降りないのか?」
「………」
大河は何かピンときたのか、フッと意地悪く微笑むと、私の足を軽く指で突いた。
「んんーー‼︎」
大きなスイカをずっと膝の上にのせていた私の足は、見事に痺れてしまっていた。
手でブロックを必死にしたが、かいくぐってくる大河の攻撃が、足にヒットする度に悶絶した。
本当にこの男、意地悪だ!大っ嫌い!
クックックッと笑いが止まらない大河に続いて、ようやく足の痺れのとれた私も車を降りた。
降りる時にそっと車のドアから外を窺う。
「もう誰もいねぇよ。降ろした食材持って、みんなとっくにバーベキュー場に行った」
ホッと胸を撫で下ろす私を見て…。
「なんでお前はそんなにいつも他人の目ばっか気にしてるんだよ」
と大河が言った。
誰のせいだと思ってるのよ!
小さい頃からいつも私と花蓮を差別して、私の劣等感を煽っているのは大河じゃない!
ずっとずっと『双子の残念な方』『社長の娘の残念な方』って言われ続けていたら、他人の目を気にせずになんていられないよ。
いつも自信満々で俺様な大河には私の気持ちなんて一生わからない…。
一気に落ち込んだが気を取り直し、私は荷物を持ってフロントの方に歩き出そうとした。
この男からとにかく早く離れよう…。
だけど。
「ちょっと待った!これ手伝え」
大河は私の腕をとり、手に持ったスイカと足元のフルーツが入った袋を指差した。
「川に持っていくの?」
と私が訊くと、大河は頷く。
保養所の裏手は渓谷のようになっていて、流れる川はいわゆる清流で、魚も釣れるし森林浴にもいい。
昔から私達は夏にここに来ると、川に下りてスイカなどのフルーツを川に浸けておいて冷やして食べていた。
これ以上大河と2人でいるのは嫌だったがしょうがない。
いつもスイカを冷やしておく場所まで来ると、大河はデニムパンツの裾を膝までまくり、ザブザブと川に入っていき「冷てぇ!」と言いながら、川に刺さっていた杭にスイカのネットを引っ掛け、私が渡したフルーツの入った袋も川に沈めた。
「その杭、まだ残っていたのね」
「ああ、確かお前が初等部の頃、光輝と悠太と俺の3人であの杭を埋めたんだったよな」
「うん」
「お前がフルーツを川に浸けておいたら流されて、食後のデザートが無くなったって大泣きしてたからなぁ。ホント鈍臭い…」
思い出した…。
川から上がってきた大河に荷物の中から出したタオルを渡す。
「サンキュー」
と屈託無く笑った大河の顔が、子供の頃の思い出とダブってなんだか変な感じがした。
「そろそろ行かないと…」
バーベキューの下拵えをしている美波先輩と恵利ちゃんを、早く行って手伝わなくっちゃ。