極上御曹司のヘタレな盲愛
「桃ちゃん!おかえりなさ〜い!大河君、ありがとう。ご苦労様」
家に着くと、母が駆け寄ってきて私を抱きしめた。

「ただいま、お母さん」
私も抱きしめ返す。

「荷物を置いてくるね」
と大河と2人で階段を上がり私の部屋に行く。

「桃の部屋に入るの子供の頃以来だな…」
大河が笑って言う。

部屋に入ると…。

「あれ?ベッドが替わってる…?」

他のものは記憶の通りなのだが、ベッドとカバー、上掛けだけが、全部記憶にあるのと違う…。

「もしかして記憶が無い間に買い替えたのかな?でもベッドなんて買い替えようと思った事も無いんだけどな…」

「そんな事を言ったって、替わってるんだからそういう事だろう。あまり深く考えるなって、医師も言ってただろ」

「そうよね…。先生が、最初は戸惑う事も多いだろうけどって言ってたのは、こういう事なのよね…。先生に言われた通り、深く考えないであるがままに受け入れよう…」

「そうだ。あるがままに受け止めて…深く考えるな…」

大河はそう言うと、ベッドに腰掛けて長い足を組んだ。

「お!なかなか寝心地よさそうだぞ…」

「そう?」

私は聞きながら、クローゼットやタンスを次々開けてみる。

「うわぁ、見事に夏物ばっかり…!知らない間に夏が終わってたんだもんね。…会社に行くまでに衣替えをして、秋物を揃えなくっちゃ…」

「秋物もだけどさ…。体調がいいなら、後でスマホを調達しに行かないか?無いと不便だろう?」

「うん!」

「でも…その前に…」

大河は自分の横をポンポンと叩くと…「おいで」と私の瞳を見つめて甘く言った。

「えっ…?」

今更ながら、密室に大河と2人っきりだって気づいた。

昨日付き合い始めたばかりで…それまでは天敵だったのに…。
なぜか、一緒にいる事に違和感がなくて…自然すぎて…。
やっぱり、何だかんだ言っても幼馴染だからなんだろうか…なんて思い始めている自分がいた…。

でも…甘過ぎる大河は別!ちっとも慣れない!

「えっと…その…」

アワアワして目が泳ぐ私の手首をそっと引いて隣に座らせると、大河はきゅうっと抱きしめてきた。
ドキドキして心臓が口から飛び出しそうだ。

大河が体を少し離し、私の瞳を覗き込んで訊いてくる。

「キス…してもいいか?」

「…昨夜は…訊かずにしたくせに…」

真っ赤になって言うと、大河はフッと笑い…顔を傾けて…私の唇にキスを落とした。

もう…訊いたくせに…いつも答えは待たないんだから…。

そう思いつつ、私もそっと目を閉じる。

大河は…角度を変え…啄ばむように触れたり、舌で唇をなぞったり…。

なんかドキドキして…ゾクゾクして…。
こんなキスも初めてな私は…緊張してされるがままになっていた。

「んっ…!」

大河の熱い舌が侵入し、口内を探られ、舌を絡め取られてビクンと身体が小さく跳ねた。

身体の奥の方が熱くなって、大河の腕にきゅっと掴まってしまう。

頭がぼーっとして何も考えられない。
はぁ…キスって…こんなに気持ちいいんだ…。


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