極上御曹司のヘタレな盲愛
部署に行くと悠太が「お!来たな…」と笑顔で言った。

「長い間お休みしてしまって、大変ご迷惑をおかけしました…」

悠太とは休んでいる間も何度か会っていたけれど、一応頭を下げる。

自席に行くと、既に出勤していた美波先輩と恵利ちゃんが、笑顔で迎えてくれた。

「体の方はもういいの?」

「無理しちゃダメですよ」

「もうすっかり大丈夫ですよ。お見舞い有難うございました」

2人に長く休んで迷惑をかけたお詫びのお菓子を差し出した。

さあ!仕事をしよう!
最初はスローペースで始めた仕事が、なんだか楽しくてサクサク進む。

他部署に備品を届けに行っても、皆優しく声をかけてくれるし、何より…営業アシの人達や、受付チームの斎藤さんに一度も会わず、嫌味を言われなかったのが良かった。



「えー〜!辞めちゃったの?」

昼休みの社食…。

「うん。営業2課のアシ達は、みんな8月いっぱいで辞めたの。2課には代わりに派遣の人が入っていて、以前と比べて仕事が数倍早く進むようになったって、皆川君がこの間の同期会で嬉しそうに言っていたわ」

美波先輩が言う横で、恵利ちゃんもウンウン頷く。

「あの方達、仕事をしないでそこら中で嫌味を言ったり、合コンを探していたりしたみたいで…。
辞めてもらって良かったって、私の同期の子達も言っていました」

そうなんだ…。

会社を辞めるような気配はちっとも無かったけれど…。
でも…なんか…ホッとした…。

「受付チームの斎藤さんはどうして…」

彼女こそ、大河がこの会社にいる限り辞めそうになかったのに…。

「……」
「……」

美波先輩も恵利ちゃんも、彼女に関しては口が重い。

「…よく知らないけど…クビだからね…何かやらかしたんじゃないの?」

「…センパイは気にしなくたっていいんですよ。…私、あの人大嫌いだから、居なくなって清々しています…」

恵利ちゃんが苦々しげに言う。

「…そうなんだ…」

なんだか釈然としないけど…いいか…。
彼女とは長い付き合いだけれど、いい思い出は何一つ無かったから…。


そんな事を考えていたら…。
私達3人で使っていた6人掛けのテーブルに、何の声掛けもなくいきなり誰かが座ってきたのでギョッとした。

私の正面の美波先輩の両側に…光輝と悠太!
という事は…。
恐る恐る横をそっと見ると…やっぱり大河!
なんでよ!

驚いて声も出ない私に構わず

「あれ?恵利ちゃん、まだB定食残ってたの?」

「えへへ、私のがラスいちなんですよ♪すみませんねぇ、常務」

「うわぁ、もうちょい早く来なきゃダメかぁ」

光輝の問いに、普通に答える恵利ちゃん…。
光輝と大河は、美波先輩とも普通に友達のように話している。
なんで…?

この人達…なんで…いつから…美波ちゃん、恵利ちゃんなんて…気安く呼んでいるの?
これも…あるがままに受け入れなくっちゃダメ?


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