極上御曹司のヘタレな盲愛
その後も…。

大河の甘々ぶりは衰える事なく…抑えられる事もなく、会社でもプライベートでも容赦なく発揮された。

以前は私が徹底的に避けていたため、会社で顔を合わせる事は滅多になかったが、避けなくなったらよく顔を合わせるようになった。

例えば…。

4階の大会議室…。

会議室の管理は庶務係の仕事だ。
さっきまで行われていた大きな会議が時間通りに終わり、私は後片付けをしていた。

一通り終え、仕上げに会議机の上を拭いていると、不意に後ろからお腹のところに腕が回ってきて、グイッと引き寄せられた。

「きゃっ!」

「捕まえた…隙だらけだな…」

耳の横で耳が震える程のいい声がした。

「もう!ビックリした!」

腕の中で向き直って軽く睨むように見上げると、大河が悪戯っ子みたいな顔で笑っている。
が、すぐに私を睨み返すと…。

「隙がありすぎ!俺以外にも簡単に捕まるんじゃねぇの?」

「会社で私にこんな事をする変質者は、大河しかいませんっ」

大河はふっと微笑むと、額に…鼻に…頬に…唇に…優しいキスを降らせた。

「あ〜…俺もう、水島に戻りたくないな…」

「もうっ!誰か来たらどうするのよっ」

私は気が気ではなく、真っ赤な顔でドアの方を見ながら大河から離れようともがく。

そんな私に構う事なく…。

「桃とこんな風に社内恋愛が出来るのもあと少しだよなぁ…」

それまで堪能しないと…と、大河は抱きしめる手を緩めてはくれない…。
むしろギュウッと余計に腕の力は強まり、身体を密着させてくる。

もう…私の心臓は破裂するんじゃないかと思うくらい、ドキドキしっぱなしだった…。


付き合い始めてからずっとこんな調子で…大河は私との距離をどんどん縮めてきている。


会社帰りも…ノー残業デーの水曜は勿論の事、私の残業に合わせて、大河と下のロビーで待ち合わせて一緒に帰る事も多くなった。

会社を出た所で待ち合わせをしようと言う私の意見はいつも却下され、ロビーの隅っこで小さくなって待っている私の元に、エレベーターを降りてきた瞬間から甘さ全開の大河が歩いてくる…。

大河は私の前まで来ると、私の腕をとって引き寄せ、髪をひと撫ですると…。

世の大半の女性を蕩けさせるような甘く優しい目で私を見つめ…耳が震える程の声で「待たせたな…帰るぞ…」と言い、顔を赤くして俯く私の手を取り指を絡ませグイッと引っ張り、まるで周囲の社員に見せつけるようにエントランスをくぐって外に出るのだ…。

いつもはキリッとした顔で、営業職の割には愛想が無く、そのあまりのイケメンぶりに近寄り難い印象の大河が、私の前では激甘だという噂がすぐに社内に流れた。

そんな激甘な大河を一目見るために、私がロビーで大河を待っている日には、多くのギャラリーが用もないのに周囲をうろついていて、噂の蕩けるような笑顔を目の当たりにし、顔を赤くして…ほうと溜息をついていた…。


< 147 / 179 >

この作品をシェア

pagetop