極上御曹司のヘタレな盲愛

決心

そんなある日…。

「お茶でも飲んで行かないか?」

医務室の前を歩いていたら、ウサコ先生に声をかけられた。
急ぎの仕事もなかったし、ちょうどウサコ先生に相談したい事もあったので、私は二つ返事でOKした。


「桃…お前、ダイエットでもしているのか?しているんだったら、すぐにやめろよ」

ウサコ先生が私の前に紅茶のカップを置きながら、いきなり訊いてきた。

「退院してからまた痩せただろう。顔色もあまり良くないし…ずっと気になっていたんだ…」

「ううん…ダイエットとかは全然してないんだけど…。
あのね、ウサコ先生に相談しようと思ってたの…。
実は私、退院してからもうずっと食欲がなくって…。最初は…歩道橋の事故からずっと眠っていたから、胃が小さくなってしまっていて食べられないんだと思ってたの…。
でももう退院して1ヶ月以上になるのに…全然食欲がわかなくって…。
食べたくないだけじゃなくて、ずっと胸焼けみたいに胃がムカムカしてるの。
それで退院してから2キロも痩せちゃって…。記憶を失う前から…合わせると4キロも減っちゃったのよ。
最初は痩せて喜んだんだけど、そのせいか体力だってなかなか戻らなくて、すぐに疲れちゃうし…。
ねぇ…ウサコ先生…。
私の体、いったいどうしちゃったんだろう…。
事故の影響でこんな風になっちゃう事とか、あるのかな?」

私の話をじっと聞いていたウサコ先生は、しばらく難しい顔で考えていたが…。

「ちょっと触るぞ…」
と言って、私の首筋に手を当てた。

「やっぱり…微熱があるな…」

「え?でも風邪とかじゃないと思うよ。だって、咳も鼻水も何もないもん!喉だって、ちっとも痛くないし…」

「うん…」

ウサコ先生は、卓上カレンダーを9月、8月、7月と遡ってペラペラと捲り、腕組みをして暫く考えていたが…。

私に目を向けるといきなり

「桃…。退院してから…生理はちゃんときているか?」
と訊いてきた。

「せ…生理…?」

「うん」

「そういえば…来てないや…。眠っている間はどうだったんだろう…。
えー〜!やだな…やっぱり事故で調子が狂っちゃったのかな?私、いつもは割と毎月ちゃんと来る方なんだけど…」

「桃…。あのさ…お前、一回婦人科を受診してみろよ。…えーっと、どこにやったかな…。あ、あった!これだ!」

ウサコ先生は、私に一枚の名刺を渡してきた。

『ゆきレディースクリニック 緑川ユキ』?


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