極上御曹司のヘタレな盲愛
「…桃が……妊娠…?」

「ああ、身に覚えはあるんだろう?結婚したんだし…。ないのか?だったら話は全然変わってくるけど…」

「いや…身に覚えは…ある…。けど…すぐにあんな事があったし…検査だってたくさんしたし…。あの時の…もしできていても…もう絶対にダメだろうと…ッ!」

「ああ、普通ダメだろうな…。お前と桃の子…なかなかしぶといじゃないか」

ウサコ先生はニカッと笑った。


「…俺…行くわ…」

次の瞬間、俺は立ち上がっていた。

内ポケットから財布を出そうとした俺に、兄貴がシッシッというように手を振り…。

「叔父さんが奢ってやるから…早く行け」
ニヤリと笑って言った。

「サンキュー!ウサコ先生も!次は俺が奢る!」

逸る足をなんとか押しとどめながら店を出る。

店を出て走り出そうとしたところで、またスマホが鳴った。

光輝からだ…。

「光輝!桃は帰っているか?」

『帰っているも何も!大河!お前たち、一体どうなっているんだよ⁉︎上手くいってたんじゃないのか?
さっき桃が帰ってきたと思ったら、大河とはもう別れたってみんなの前で…。
桃の様子が変だって母さんが言うから、偶々今日は、俺も親父も花蓮も早く帰っていたんだ。
桃、今年いっぱいで会社を辞めて、家も出るからって言うだけ言って、今…部屋に鍵をかけて閉じこもっているよ。
花蓮と母さんが部屋の前で理由を訊いたりしているけど、中から小さく泣き声だけが聞こえるだけで、一切返事もしない…。
お前、桃と一体何があったんだよ!』

「光輝!今そっちに向かってる」

俺は拾ったタクシーに乗り込みながら言った。

「俺が行くまで絶対に桃を部屋から出すなよ」

そう言って電話を切った。


バカ桃!
いったい、誰の子だと勘違いしているんだ!

別れを告げられたショックより、桃が俺以外の男とそうなったって、誤解でも想像した事の方がショックだ!

一刻も早く誤解を解いてやらねば…。

どんな思いで…記憶を失ったまま…妊娠しているという現実を受け止めたんだろうか…。

どれだけの衝撃を受けただろう…。

桃のためと思いながら…また辛く悲しい思いをさせてしまった!

全部…全部言おう…。

桃に…。

早く…早く!


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