極上御曹司のヘタレな盲愛
そして…今日は私と大河の結婚式の日…。

大掛かりなお式や披露宴は、妊娠している私が大変だろうと、身内や近しい人達だけを呼んだものになった。

それでもやはり大河も私も大企業の直系の子女のため、ささやかな…とはいかず、水島系列の老舗ホテルで行われた披露宴は、一番大きなホールがいっぱいになる程の招待客の多さだった。

悪阻であまり体調の良くない私に代わり、仲良しな似鳥の母と水島のお義母さんが、場所から日どりから招待客まで全て、あっという間に決めてしまった。
私は大河と一緒にドレスを選んだだけ。

ちなみに水島のお義母さんは今だに、私が「お義母さん」と呼ぶたびに「桃ちゃんがやっと娘になった…」と瞳を潤ませる。

悪阻で痩せてしまったため、安定期に入ろうかという時期だが、ドレスを着てもお腹はそんなに目立たない。

神様の前で、大河と永遠の愛を誓った後…。

「桃ちゃん、おめでとう!」
「桃センパイ!綺麗です!」

美波先輩と恵利ちゃんに声をかけられる。
二人とも大号泣だ…。
本当に彼女達には心の底から感謝している。
誰もが私の事を『社長の娘の残念な方』と言っていたニタドリで…。
それでも楽しく仕事ができていたのは二人のおかげだ。
いつも二人だけは私の味方でいてくれた。

「二人ともおめでとう!」

ウサコ先生と竜牙さん…そして航我君が笑っている。
三人がいなければ、私と大河がこんな風に幸せになる事はなかった。
ウサコ先生…私との約束、守ってくれなくてありがとうね。
竜牙さん…斎藤さんのお父さんから助けてくれてありがとうございます。
航我君…歩道橋から落ちる私を助けてくれて…本当にありがとう。

「桃!大河!おめでとう!」
「大河!桃!おめでとう」

光輝と花蓮に抱きしめられて、とうとう我慢していた涙が溢れてしまった。
いっぱい誤解して…勝手に避けてきてごめんね。

私が家を出て大河と再び暮らすようになって…。
花蓮と二人でよくご飯を食べに行くようになった。
実家にいる時には、私が勝手に避けていたから、二人でご飯って一回も無かったのに…。
昔話から始まり、悠太との恋バナから、私が知らない大河が私に隠れてしていた事の暴露話、…斎藤さんの事とか…小さい頃からお互いに対してどんな気持ちでいたのか…とか。
ここにきて話は尽きない。

花蓮は…小さい頃からずっと悠太の事が好きだったんだって。
悠太にいつも守られて…小さくて、すぐに泣いて、弱さを見せられる私の事が昔から羨ましくて仕方がなかったって言っていた。
悠太は昔から、誰にだか知らないけど叶わぬ恋をしていて、振り向かせるのはとても大変だったけど、押しに押して漸く手に入れたんだって笑っていた。

私はいつだって花蓮の事が羨ましくてしょうがなかった。
でも花蓮も私を羨んでいた。
お互い「無い物ねだりってこういう事だよね〜」って笑い合ったんだ。

「私、花蓮と双子で生まれてきてよかった。大好きよ…」

私が抱きしめ返して言うと、花蓮の目にも大粒の涙が…。

隣で微笑む、花蓮との結婚式を2ヶ月後に控えた悠太に
「妹をよろしくね」
と泣き笑いで言うと、子供の頃から変わらない優しい笑顔で「任せて!」とニッコリ笑って言った。

悠太…子供の頃から…大人になっても、いつも私に優しくしてくれてありがとう。


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