極上御曹司のヘタレな盲愛

急接近

「…センパイ!桃センパイ!チヂミ焦げてますよ!」

フライ返しを持ったままボーッとしていた私は、恵利ちゃんの声で、ハッと我に返った。

今はもう20時。
昼から始まった慰安旅行のバーベキュー大会は19時過ぎくらいに終わったが、外ではまだ残ったお肉で酒宴が盛り上がっている。

川から戻った後、ボーっとして使い物にならない私のために、美波先輩と恵利ちゃんは、片付けをどんどん進めてくれて、私達3人は早々に割り当てられた自分達のコテージに戻った。

この保養所は、中央管理棟の中に、管理人室、食堂、露天・内風呂と揃った大浴場、多目的ホール、4人部屋が10部屋ある。

管理棟の横にバーベキュー場、テニスコート2面があり、その反対側の森の中に、6人まで泊まれるコテージが15棟点在している。

コテージはメゾネットになっていて、1階に簡易キッチンとダイニング、リビング、浴室、トイレ、リビングと続きでシングルベットが2つ入った部屋があり、リビングの螺旋階段を上って、ダブルベッドが入った部屋が2つある。

リビングの掃き出し窓から続くウッドデッキには、木製のテーブルと椅子が設置されていた。

くじ引きで当たって、私達3人でコテージに泊まる事ができて本当にラッキーだった。
残っていたバーベキューの食材とお酒を、美波先輩がクーラーボックスに入れて、かなりの量をくすねてきていた。

「今夜は夜通し飲むぞ〜!」
と先輩が言ったので、3人で順番にお風呂に入っていて、私は最後なのでおつまみを作っている所だった。

「はい、焦げたチヂミ…ごめんね」
お風呂から出た恵利ちゃんに止めてもらわなければ、炭になる所だった。

「桃センパイ、大丈夫ですか?」

川から戻った私の様子が明らかにおかしいのに、コテージに戻ってからも、私が自分から話すまで、美波先輩も恵利ちゃんも何も聞かないつもりらしい。

「うん、大丈夫よ」

おつまみもあらかた作り終わったし…。

「私、お風呂に入ってくるね。先に飲んでて」

「っていうか、今日は昼からずっと飲んでいますけどね」

恵利ちゃんは、笑いながら焦げたチヂミとチューハイを持って、ウッドデッキでスタンばってる美波先輩の方に歩いて行った。

大浴場に3人で入りに行っても良かったのだが…。

「営業アシのお姉様方に会ったら嫌でしょう?夕方の事もあるしね」
って美波先輩に言われて…。


夕方、私は一人になった隙を狙われて、営業アシの人達に囲まれてしまったから。

それというのも…。

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