極上御曹司のヘタレな盲愛
チャプン…。

管理棟の大浴場も、露天風呂があったりして良いけど、このコテージに付いているお風呂も、ユニットバスとは違い、広めで足を伸ばせるジェットバスまで付いているお風呂だ。

恵利ちゃんがお風呂から出る時に、新しいお湯を張って、持参したとても良い匂いがする入浴剤を入れておいてくれた。

私は、バーベキューで煙臭くなった髪を洗い、湯船で足を伸ばし…。

「はーーーーっ」
と目を瞑り長い溜息を漏らした。

疲れた…。
なんか、心が…めっちゃ疲れた…。


入社してから2年と3ヶ月。
直属の上司である悠太は別として、光輝、大河とは出来るだけ関わらないようにしてきた。
社内を歩いている時に、チラリとでも目に入ると、そっと回れ右をして違う道を選んだ。

私が光輝の妹で、花蓮と双子の社長の娘だという事は、入社した時から既に社内中に知られていた。
そうしてすぐにまた『双子の残念な方』『社長の娘の残念な方』と、特に女性社員から陰で呼ばれるようになった。

気をつけてはいたが、たまに社食やエントランスなど、目立つところで背後から、大河や光輝に声をかけられてしまう事があった。

そんな時私は、愛想なく不自然なくらい会話を短く終わらせて立ち去るのが常なのだが、それを見た女性社員の方々は、私が『残念な方』のクセに話しかけられて嬉しそうにしていた、とえらく気分を害される…。

でもまだ…営業アシの人達のように、ああやって言ってくる人達はいいのだ。


< 23 / 179 >

この作品をシェア

pagetop