極上御曹司のヘタレな盲愛
「もういいぞ…」
昇降口の陰に向かって声をかけると、ビデオカメラを構えた航我が現れた…。

「ちゃんと撮れたよ…先輩…」
航我が斎藤紫織に冷たく笑って言った。

「じゃ、行くか…」

「い…行くって…どこに…」
斎藤紫織が訊いてくる。

「とりあえず、この証拠の数々と今日撮った動画を持って…中等部の職員室と、それから中等部長室、学長室、理事長室。
ウチと似鳥と藤井が寄付金を減らすって言ったら、学校大慌てだろうな…。
職員達との話し合いによっては、あとで弁護士の所に寄って、警察署だな。
あ…この素敵に飾られた靴も証拠として貰っていくぜ…」

俺達がその場を去ろうとすると…。


「まっ!待ってください!私達、もう桃さんに嫌がらせはしませんっ!約束します!
その子がしようとしたら、私達がちゃんと止めます!っていうか、見張っておきますから!」

斎藤紫織以外の女が、全員涙目で俺達に手を合わせて拝んでいる。

「やめてくれると言うんだったら、とりあえず今は警察沙汰にはしない…。
でも…学校には報告させてもらう」

「中等部の先生方に言いたい事もあるしね…。この証拠の動画なんかは、君達が大学を卒業するまで僕達で大切に保管しておく…。
表に出さなくていい事を願うよ」
悠太が言う。


その後、航我に桃の新しい靴を買いに行かせ…。

俺達3人は中等部の職員室に乗り込み、桃の担任にイジメの数々の証拠を突きつけ、担任と学年主任を連れて中等部長室で中等部長に学内でのイジメを認めさせ、対応の不味さを反省させ、二度と桃が嫌がらせを受ける事がないよう、中等部職員で斎藤紫織に目を光らせておくように要望した。

勿論担任に、双子のタイプの違いで桃を貶めるような事を二度と言うなと釘をさすのも忘れなかった。

一応、祖父さんの古くからの友人で、俺の事を小さい頃から可愛がってくれている理事長にも報告して、中等部長に一言言って貰っておいた。


その事があって以来、桃に対する直接的な嫌がらせは無くなったようだ…と花蓮は言っていた。



でもそれからも相変わらず、桃は俺たちを…特に俺を避け続けた。

桃が高等部に上がっても…大学生になっても…ニタドリに就職してからも…。

ずっと俺は桃と仲良くなるどころか…顔すら見られず、接点すら持てなかった…。

桃に対する俺の思いは、薄れるどころか日に日に募ったが…。

どうにもならない状態が…何年も何年も続いていたんだ。


桃は…俺がどんなに自分の事を好きか…知らない…。

桃は…どれだけ長い間…俺が桃の事を好きか…知らないんだ…。


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