極上御曹司のヘタレな盲愛
始業時間になり…誰もいない階段室に、恥ずかしい水音と…微かな2人の溜息だけが響く…。

もうどれくらいの時間が経ったのかもわからない。
初めてのこんな激しいキスに、何も考えられなくなった頃…。

大河が…絡めていた私の舌をグッと強く吸い上げると…お腹の下の奥の方がぶるんと震え…私は腰が抜けたようになった…。

膝にも力が入らず立っていられなくなり、ガクンと崩れ落ちそうになる。

大河が慌てたように腰に回していた腕に力を入れ、私を抱きとめた。

ようやく唇が離され、足りなくなった酸素を求めて私は肩で息をした。

「ごめん…悪かった…」

自分でも気づかなかったが…いつのまにか泣いてしまっている…。

涙が止まらないまま見上げると、いつも憎らしいくらい自信満々な大河が、眉尻を下げて見た事もないくらい情け無い表情をしていた。

大河は私の頬に手を当てて、涙を指で優しく拭った。

それでも溢れる涙に唇を寄せてそっと吸うと…小さな声で「ごめん…」と呟き、ギュッと強く私を抱きしめ…自分の胸に私の顔をグイグイ押し付けた。
大河のワイシャツに私の涙がどんどん染み込んでいく。

「大河…ダメよ…。…ワイシャツが染みになっちゃうよ…」

私が心配になってしゃくりあげながら言うと

「大丈夫だよ…。ロッカーに替えのシャツがあるから…」

大河は私の髪を優しく撫でながら言う。
さっきの激しさが嘘のようだ…。

「大河…。大河は…なんで私に…こんな事ばっかりするのよ…」

花蓮にだったらわかるけど、私にあんなキスをする意味がわからない…。
なにか…まるで高橋君に嫉妬しているみたいだった…。

「そんなの…」
大河は私の髪を耳にかけると…腰を屈め唇を寄せ…耳が震えるほどのバリトンボイスで…。

「そんなの…好きだからに決まってるだろ…」

そう言ってまたキスをしてこようとする。

「待って!だったら尚更、私とこういう事したらダメでしょう!」

私は近づいてくる大河の形の良い口を手で塞いで、グイーっと押しやった。

「ほはへほひふひはふへ、はへふぉふふんはほ!」

ん…?なんですか…?
私が口を塞いでいた手を外すと

「お前とキスしなくて、誰とするんだよ!」
と大河は再び言った。


「…そんなの!花蓮に決まってるじゃない!
大河が子供の頃からずっと好きなのは花蓮でしょう!」


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