極上御曹司のヘタレな盲愛
「………」

大河の動きが全停止した…。

口をポカンと開けて…。
多くの女性を魅了する青みがかったつり気味のアーモンドアイが…。

人って…驚くと本当に目が点になるんだな…と思った。
こんな間の抜けた大河の顔…たぶん誰も見た事ない…。

たっぷり30秒は固まっていただろうか。

大河はハッと何か思い浮かんだような顔をしたが
「いや、待て待て…俺あの後…訂正しなかったか…」
と小さく呟いた。

眉間に人差し指を当てて
「うーん。それに…言わなかったかな…慰安旅行の時、川で…」

考え込んだ後…私の顔をじっと見て…。

「俺とお前は、一回しっかりと2人で話し合う事が必要だ…。それも早急に!」

と言い出し、ポケットからスマホを取り出すと…。

「もしもし悠太?悪いんだけど…今日、桃は有休って事にしといてくれ。…うん、連れて帰るから…」

えっ?もう!勝手に!

「もしもし皆川?悪いけど今日オレ有休とるわ。…いや、ちょっと家で問題があって…。あ…それと…オレ夕方にMデパートに顔を出さなきゃいけなかったんだけど、それ高橋に行かせて。カタログ持って顔見せだけだから。そう…。先方には連絡しておくからよろしくな。
あと今日はもう電話してくるなよ!人生賭けた大事な話し合いがあるから…」

皆川主任への電話を切った大河は

「Mデパートの田中さん…イケメン相手だと話が長いんだよなー」
と悪い顔をした。

程なく私のスマホに高橋君から
『急な出張が入ってしまったので、今日の晩飯の約束、また今度にして貰ってもいいかな?ゴメンね!』
とメールが入った。
こっちこそ、本当にゴメンね!

「じゃ、帰るぞ」
大河は私の手を取り階段を下り始めた。

地下の駐車場まで来ると
「あ…忘れてた…」
もう1度スマホを取り出す。

「…あ、光輝?桃を捕まえた。今日は俺たち有休とって、2人でちゃんと話し合うから…」

私の方をチラッと見て

「昨夜はビジネスホテルに一人で泊まったらしい。おじさん達にも心配かけてごめんって言っておいて」

私と高橋君の話…聞こえていたんだ。

「みんな心配したんだぞ」
電話を切った大河に軽く睨まれる。

「ごめんなさい…」
私はシュンとして小さくなった。


< 71 / 179 >

この作品をシェア

pagetop