極上御曹司のヘタレな盲愛
「なんで…?」

「辛い目にあった時、お前は何時も悠太に相談したろ?誰にも…親にだって…兄妹にだって何も言わないのに…。
お前が泣いている時、いつでも抱きしめて慰めるのは悠太の役目だった。小さい時も…中等部でお前が嫌がらせを受けている時も…。
会社に入って、例の同期の女と色々あった時も…何時もお前は悠太だけに頼って、悠太の腕の中で泣いていただろう…?」

中等部の時、公園で悠太に抱きしめられて慰められている所も、麻美ちゃんの事があった後、会議室で泣く私を悠太が慰めている所も…光輝と二人で目撃したんだ…。大河は不貞腐れたように言うと、俺が慰めたかったのに!と…私をギュッと抱きしめた。

「1ヶ月前に悠太と花蓮が婚約するって言い出した時…。お前がショックを受けるなって光輝と話したけど…。
でも…俺は…ようやく桃を手に入れられるチャンスだと思ったんだ。
それで悠太に頼んで、お前と強制的に接点を持つために、うちの課と庶務課の今年の慰安旅行を一緒にして貰った。
アイツらに、今回の慰安旅行でなんとしても桃に逃げられないように協力して貰って…『悠太は花蓮と結婚するから、諦めて俺と結婚しろ』って言うつもりだったんだ」

そうして…花蓮と悠太の婚約を知ってショックを受けた私を、大河が川まで追ってきたらしい。
後を追おうとした恵利ちゃんと高橋君を、光輝が引き止めて…。

「久し振りにちゃんと話してみれば、悠太の事は特別に好きじゃないって言うし…。
そんなの聞いたら、俺もう頑張るしかなくね?
隣に居るお前が…もう可愛くて可愛くて…。
何か話が噛み合ってないような気がしつつも…プロポーズして…キスしてた…」

そう言うと…大河は私のおでこにチュッとキスをした。

「こうやって一回触れてしまったら…もう止められない。なんせ20年を超える想いだからな。
もう俺のそばにお前を置いておきたくて…。
色々手を回して…やっとお前を手に入れたと思ったのに…。
…高橋の野郎っ…」

いやいや!高橋君、何も悪くないからね!私がそう言うと。

「いいや。俺以外の男が桃を好きになる事がすでに罪だ…。だからアイツは俺の代わりに出張漬けにしてやる!」

「ダメでしょ!それパワハラで訴えられるヤツでしょ!」

私が言うと、大河はクスクス笑いながら私の頬を大きな手で包んだ。

「という事で…。この20年以上、俺がどれだけお前の事を好きでいたか…わかったか。
花蓮じゃない…。
俺がずっと欲しくてしょうがなかったのは…桃だ…。
お前以外…誰もいらない…」

挑むような瞳で私をじっと見つめて言う。

「初めから…好きって…ちゃんと言えば良かったよな。
何年もずっと…最初からちゃんとお前に優しくして…好きだって言い続ければ良かったって、ずっと後悔していた。
桃…。
今までもこれからも…俺は桃だけが好きだ…。
絶対に幸せにしてやるから…。
俺と結婚して…ずっと俺のそばで一生を共に過ごして欲しい…」

大河は私の左手をとり、薬指にそっとキスをすると…私の目を覗き込み『返事は?』という顔をした。


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