極上御曹司のヘタレな盲愛
「……」

私が大河を見つめたままいつまでも黙っているので、不安になったらしい。

大河は痺れを切らしたように
「イ…イエス以外の返事は却下だからな…」
と小さく言った。


「えっと…返事…じゃないかもしれないけど…私の今の気持ちを言ってもいい?」

大河は子供のようにコクリと頷いた。

「慰安旅行の朝まで…天敵だとずっと思っていたの…大河の事を…。
昔から苦手で…怖くて…大っ嫌いで…。
大河も『双子の残念な方』って呼ぶくらい私の事を嫌いなんだと思っていたから…。
だから、ずっと全力で逃げ回っていたの。
近づいたら絶対に傷つくから、大河には絶対に近づいちゃダメだって…。
でも慰安旅行で…大河との距離がなんか急に近くなって…凄く戸惑ったし…怖かった…。ずっと嫌な思いをしてたから…周りの目も凄く怖くて…。もう…逃げたくて…。
しかも花蓮の事を好きだと思ってた大河が私と急に結婚するとか急に言いだすし…あり得ないって思った。
だって!天敵だよ!
大河と同じ空間で笑い合うことなんて…もう一生ないと思っていたのに…」

天敵…と悲しそうに大河が呟く…。

「でもね…。大人になった今…。
なんかバーベキューも楽しかったし…。
結婚とかはあり得ないと思ったけど、川で大河と普通に話せて…。
夜にみんなで飲んだお酒も楽しくて…。
あれ?何かおかしいぞって思ったの。
何よりおかしいって思ったのが私の気持ちで…」

私は一度言葉を切り、悲しそうな顔した大河の顔をじっと見て、思い切って言った。

「あのね…あの…大嫌いな筈だったのにね…。なんか…嫌…じゃ…なかったのよ…」

「何が?」と訊かれ、自分の顔が真っ赤に染まるのがわかった。

「えっと…その…。
…大河に抱きしめられたりとか…キスされたりとか…あり得ないって思ったけど…なんか嫌じゃなかったのッ」

私は俯いて、ものすごく早口で言った。

「困ったけど…それよりも凄く恥ずかしくてドキドキして…なんでだか一回も嫌って思わなかったの…」

それを聞いた大河の顔が、パーッと明るくなり抱きしめてこようとする。

「大河!待って!最後まで話を聞いて!」
と回ってきた手をグイッと押しやった。


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