極上御曹司のヘタレな盲愛
「どこかの誰かさんが裏で色々手を回していたせいで…初恋もまだな私は、男の人を好きって気持ちがこんないい歳になってもよくわからないのよ…。
抱きしめられたり、キスされてドキドキするのも…相手が大河だからか、男の人と初めてこういう事をするからなのか…わからない。
ただ…高橋君にギュってされても、苦しいって思うだけでドキドキする事はなかったの。
でも…じゃあ、大河の事が好きなのかって訊かれたら、多分違う…。
だって!
大河がずっと私の事を好きだったって今色々聞かされて…嬉しいっていうより…。
…正直…引いた…」

眉尻を下げてガーンとショックを受けた顔の大河に更に言う。

「私にちゃんと直接好きだって言わないで、20年以上も影でコソコソと…。
いくらお兄ちゃんの親友で、イケメンで御曹司だとしても、完全にアウト!」

ないわぁ…って言うと、大河はガックリと肩を落としてションボリと項垂れている。

ふふっ…なんか可愛い…。
大河ってこんなに表情豊かな人だった?
今までずっと逃げ回っていたから、意地悪な顔しか見た事ないと思っていたけど…。

やっぱり…自分の心の変化に驚く。
天敵だったのに…可愛いなんて…。

「でも…でもね…。
昨日…お昼休みに受付の所で…大河が花蓮となんだかイチャイチャしている所を見かけて…。
ああ…大河頑張ってるな、これで私はもう愛のない結婚をしなくていいなって思ったの…。
でも…仲良しな2人を見てたら…なんでか、こう…心がザワザワして…ムカムカして…」

私は自分の胸に手を当てた。

「そんな風に心がなるのは初めてで…。
やっぱり逃げようと思ったの…。
これ以上大河に近づいてしまったら…また傷つくから逃げようって…。
だからホテルに泊まって…逃げたの…。
大河と花蓮がうまくいけば結婚しなくてもいいって思ってた筈なのに…仲良しな2人を見たくなくて一人暮らしして転職しようって考えたり…。
本当に私、こんなの初めてで…自分の気持ちがよくわからないのよ」

さっきまで項垂れていた大河は、私がそう言うとなぜか嬉しそうに言った。

「それってさ…。そのザワッとする感じ…。
俺はよく知ってる…。
何度も…悠太がお前を抱きしめて慰めているのを見た時…そんな風に心がザワザワしたよ。
昨日も…帰ってこないお前が、高橋と一緒に居るんじゃないかって考えていた時もそうだった…。
それってさ…『嫉妬』だよな。
桃…お前は俺と花蓮を見て『嫉妬』したんだよ」

イチャイチャはしてないけど…と言いながら、大河は私を胸に閉じ込めギューっと抱きしめた。

私のこの…わけのわからない感情が…嫉妬…?


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