極上御曹司のヘタレな盲愛
知らなかった…。中等部の時のこと…。

あの時…悠太が3人のフアンの人達に言ってくれたから直接的な嫌がらせが無くなったんだと私は単純に思っていたけれど…。

3人で証拠の映像まで撮って、主犯の斎藤さんに言ってくれていたんだ…。

私は何も知らず…斎藤紫織の言う事を鵜呑みにして…ずっとみんなを避けて…。

どうしよう…泣きそう…。

思わず大河のシャツをキュッと握ってしまう。
本当はギュって抱きつきたい…。


「そこまで執拗に、君が桃を憎む理由を教えてくれないか?」

「……」
唇を噛んで何も言わない斎藤さん…。

「まあ、だいたいわかるけど…ね。
とにかく君は今回、社内で傷害事件を起こした。わかってる?だから…クビ一択だからね。後の事は、人事に相談し…」

「私を…!私をその辺の馬鹿女達と一緒にクビにしようって言ったって、簡単には出来ないわよ!
提携先の会社の社長の娘を、簡単にクビになんて出来るわけないでしょう!」

斎藤さんは『その辺の馬鹿女達』と…営業アシの人達や受付チームの同僚を指差して叫ぶように言った。

周囲の女性社員達が息をのむのがわかった。

「いや、クビに出来るよ。君のお父さんの会社『ST製薬』との提携は、今月末で終了だ。以降、契約更新はしない。取締役会でもすぐに承認されるよ。
もっと条件のいい会社と提携するからね…」

光輝が大河と目を見かわしてニヤリと笑った。
大河が溜息をついてコクリと頷く。
確か水島グループにも製薬部門があった。

「そんなわけない!パパは…私が水島さんのそばに居るためにニタドリに入りたいって言ったから、破格の好条件でニタドリに提携を申し出たのよ!
他の会社がとても真似できないような…!
だから私が、花蓮ちゃんと同じ受付がやりたいって言ったら、人事だって二つ返事でOKしたわよ!
パパに頼めば今まで思い通りにならなかった事なんて何もない!
パパは水島さんだって、そのうち手に入れてやるって言っていたもの!
だから…そんなに簡単に提携を終わらせるなんて事、ニタドリだって出来ない筈よ!」

「出来るんだな、これが…。
君…誰に喧嘩を売ったか、本当にわかってるの?
兄の俺が例え許したとしてもね…。君の嘘のせいで10年以上ずっと、最愛の桃に避けられる事になってしまったこの男が、絶対に君を許しはしないよ。
あと桃を溺愛している水島グループの会長もいる…。あの人を怒らせたら君のパパの会社なんて、あっという間に消えて無くなってしまうよ。
社格が全然違うでしょ。本当にわかってるの?」


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