極上御曹司のヘタレな盲愛
「桃センパイ!怪我してるじゃないですか!」

「わっ!何?この血!」

「桃センパイ…誰にやられたんですか?やっぱり座り込んでるこの人ですか?私、2・3発殴っておきましょうか?」

恵利ちゃんが拳を握って振り上げるので、悠太に事情を説明していた光輝が慌てて止めた。

「恵利ちゃん!大丈夫!もう制裁は受けたから…!っていうか、これから凄い制裁を受けるから!君が、こんな女のために手を汚す必要はないよ」

「でも…桃センパイ、ごめんなさい。助けに来るのが遅すぎて…」

「今朝は総務部のフロアに女子社員がいつもより全然少なくて、おかしいねって言ってたの。桃ちゃんも来ないし…。
そうしたら始業時間が過ぎて1人、慌てて私たちの所に走ってきて、更衣室で桃ちゃんが営業や受付の人達に絡まれて揉めている、常務や水島課長も加わって大騒動になってるって言うから、藤井課長と3人で急いで上がってきたの…」

「でも…間に合いませんでした…」

「ううん…こうして助けに来てくれただけで嬉しいよ。ありがとう!」

涙目になっている恵利ちゃんの手をキュッと握る。

「美波先輩。私…今から医務室に行って手当てしてもらったら仕事に戻りますから、後の事を頼んじゃってもいいですか?」

「任せておいて!恵利ちゃん、部署に戻って第3会議室の使用申請を出して。午前中は空いてる筈だから。あと、床を拭く雑巾2枚とバケツを持って来て」

「合点承知!」

恵利ちゃんが忍者のように階段室に消える。


「さあ!立って!」

美波先輩は、座り込んでいた斉藤さんの腕をとりグイッと無理矢理立たせると、並んでいる営業アシと受付の人達を第3会議室の方に追い立てた。

そこまで見届け、私と大河は、光輝と悠太に後を任せ医務室に向かった…。


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