【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「授業でなんの曲弾くの?」

「まだ決めてないんだ。何か簡単な曲がいいんだけど」

「例えば……きらきら星は?」


大賀君は私を、じっと見つめた。


「きらきら星かぁ。それならドレミも分かるしいいかも」

「うん。繰り返しが多いから、いいと思うよ」


大賀君は下ろしていたバイオリンを再び肩の上に置いて、顎で支える。そして弦に弓を添えた。


凛とした立ち姿に、私の心臓はどくどくと音を立てている。


きらきら星が、目の前で奏でられている。


柔らかくてつやっぽい優しい音が、私の鼓膜を震わせる。



単音なのにビブラートがかかって、太くしっかりした音は、まるでプロだ。



あっという間に一曲が終わった。



もっと聴いていたかったな、なんて贅沢なことを思ってしまうような、途方もないほど綺麗な響きだった。



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