【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
大賀君の視線が、バイオリンから私に移る。スッと、楽器を下ろした。



パチパチと、私は拍手した。


「すごく綺麗だった」


聴き惚れてしまった。
さすが、大賀君だ。手の届かない星だ。


「……ありがと」


そのまま目を伏せた彼は「このバイオリン……ヤバそうで、意外といけるね」と私に差し出した。


楽器を受け取ったときの、何かの、違和感。……空気?



わからない。でも何かを感じて、彼を見上げた。



「え……大賀君?」


ドキドキと心臓が鳴り始める。


「どうしたの?」


なんで?


大賀君の目に、涙が浮かんでいる。


「……なんでもない」


顔を背けて、目をこする大賀君は、そう言って笑った。


……なんで?
なんでそんなに悲しそうに笑うの?



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