【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「高校に行きたい」とためしに両親に伝えてみた。
あの時の顔は忘れられない。
そこまで喜ぶとは思ってもなかった。


志望校、星津学園高等部。
それはさすがに遠すぎるんじゃないか、と両親は言葉を濁した。けど、結局応援してくれた。


早々に家庭教師をつけてくれて、しばらくはごちそう続き。
私の食べ残しをみても、まだ嬉しそうだった。


ひっかかった。なんで喜ぶ?
高校へ行くなんてこと、みんなは当たり前のようにしている。


両親の期待値がそこまで大暴落していることに、この時やっと気づいた。
ショックだった。


考えてみれば、口癖みたいに言われていた「勉強しなさい」は、いつから聞いてない?

言われるのはいつも、「ご飯食べよう」「外の空気を吸いに行こう」と、人としての、最低限。


塞ぎこんでいた私は、そんなことにも気づいていなかった。
数年ぶりの客観視だった。



けれど、その前進はいいしれない劣等感を沸き出させる。



学校に行っているみんなと、私は違う。



私だけが、ちっぽけで、孤独で……生きる意味なんか持っていなくて。



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