【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「乗り越えてない……」


きっと、そんな日なんか来ない。



「だけど、大賀君がいたから……ここまで、やっとたどり着いた」


大賀君の歌声に出会って、蓮のことで停滞した心が、また動き出せたから。


だから、向き合えるところまで、来られた。


蓮が亡くなった意味。生きた意味。


私にはもう、生きることしかないんだってこと。


「……葉由」


その声が、私は好き。



だけど……よくないね……?


「大賀君……」


大賀君の胸が、私の涙でびしょびしょだ。


彼の方から鼻をすする音がしてすぐ、震える溜息が聞こえた。


「俺……葉由と付き合ってたら……、どんどん頭の中、優ちゃんのことばっかになっていく」


掠れかけた涙声だった。


体を離した大賀君を見れば、両目を赤くして、涙がたまっている。



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