【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「……、おはよう」

小さすぎて聞こえたか不安になる。

「……はよ」

だけど、小さく返ってきた。


「大賀君」


彼の方へ顔を上げたら、大賀君は席を立って背を向けて、そのまま歩きだしてしまった。


私も急いで立ち上がった。


でも、追いかける一歩なんて出せなくて、離れていく後ろ姿をただ見つめる。



……そっか。もう終わりなんだ。


ぺたんと椅子に腰を下ろす。


じわっと涙が浮かんで、プリントに落ちた涙染みが丸く広がった。


「……葉由?どうした?」


指先で涙を拭いて、見上げると栞ちゃんが目の前にいた。


「大賀君と何かあった?」


頷いて答える私の視界の端っこに、西田さんがいた。


視線をずらすと、仲良しグループと輪を作っている彼女がこっちを見ている。


心配そうに眉間に皺を寄せて。


目が合った私に「大丈夫?」と唇を動かした彼女に、「大丈夫」と頷く。



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