【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「なんか全然、ちゃんと話せてないね」

「んーん。いいよ。無理に聞こうとは思ってない」


栞ちゃんは子供に向けるような優しい笑みを向ける。その笑顔って、入学式の時も見た。

……栞ちゃんは、折れそうな相手を見ると、こういう表情をむけるのかな。


「じゃあ、葉由の中で、付き合ったのは間違いじゃなかったんだね?」

「うん。たった一カ月だけど、夢みたいに楽しかったから」

「あ」

「え?」

「……笑ってる、葉由」


そう言われて、口角が上がっていることに気付いた。


「……葉由は本当に、大賀君が好きだね」


「うん」


大好きだよ。

葉由って呼ぶ声。抱き寄せる腕のぬくもり。鼓動。

通い合えそうだった恋心。

夢みたいだった。全部。



「はー、大賀君もったいな!」


そう言って栞ちゃんは箸を進める。


栞ちゃんは、おいしそうに食べるなぁ……。


「……私も食べよ」


ぱかっと開いたお弁当は、いつも通りなのに。


なんだかだんだん苦しくなってきて、泣きながら食べた。


そっと背中に置かれた手のひらがとても暖かくて、ますます涙が溢れた。




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