【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
放課後の廊下で、大賀君を見つけた。手元の楽譜をパラパラとめくりながら、廊下の少し先からこちら側へ向かって歩いてくる。


ドキドキと心臓を高鳴らせ、「ばいばい」と自然に言う練習を、頭の中で繰り返す。


すると、大賀君がちょうど通り過ぎた後の教室から、笠間君が出てきたのが見えた。


彼は両ポケットに手を突っ込んだまま、大賀君を追いかけるように、足早で歩いている。


大賀君を追い越す瞬間。


笠間君はポケットから片手を引っこ抜いた。

そしてその手は、大賀君の背中に振りかざされる。



バシン!
大賀君はよろけた。
笠間君は、その手をポケットにしまう。


そして、何もなかったような顔をして、大賀君の先を歩いていった。


大賀君は、笑っている。


言葉も交わさない。目も見ない。


だけど、大賀君の心には、十分に届いている……「元気出せよ」って、笠間君のエールが。



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