【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。

不穏な教室

七月に入った今は、十分夏だ。


温暖化防止だっていうけど、クーラーの効きが弱すぎる。暑い。


換気していないから空気も悪いし、みんなだれている。


「あーだるいー」


栞ちゃんは机で突っ伏しながら、片手で扇ぐ。



「うちわ持ってこようか。今日駅前でもらったやつだけど」

「貸してぇー!」

「うん。待っててね」


そう言って席に戻ろうとしたとき、ふと視界に入った違和感。


……西田さんの姿。


イヤホンを耳に突っ込んで、頬杖をつくその表情は、まるで別人のように暗い。


「西田さん……?」


彼女の席に寄ると、西田さんは顔を上げて、ぱっと笑みを見せた。


「葉由どうした?」


「え……」


あれ、勘違いだったかな?
西田さんはいつも通り明るい。


「あ、ううん。今日暑いよね」


「設定温度28度だもん。意味ないよね、クーラー」


「うん」


やっぱりいつも通りだ。


うちわを栞ちゃんに渡すと、チャイムが鳴った。




やっと二限だ。
一日が、長い。



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