【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「葉由、団扇もう一枚持ってない?」


隣の席からそう言われて、持っていない自分をちょっとだけ悔む。


「下敷きなら……」


パタパタと風を送ると、大賀君は気持ちよさそうに目を細めた。


「うわーすずしー」


「大賀、楠本!授業中だぞ!」


先生に怒られてびくっとした私を大賀君はクスクスと笑った。


「先生―、暑すぎて無理なんですけど」


大賀君がそういうと、クラスメイトもあちこちから賛成する。


「仕方ないなぁ。内緒だぞ」


と、先生に温度を下げてもらった教室は、すごく快適で。


みんな清々しそうにしているのに。


……西田さんは、やっぱり……いつもとは違う。


そういえば今日、西田さんはずっと一人だ。

仲良しグループの人たちと、今朝は一緒にいなかったような気がする。



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