【完】一生分の好きを、君に捧ぐ。
「わたしはそれが嫌になっちゃって。中学のときなんかどのグループにも属さないって決めてね?浅―く広―く付き合ってみたんだけど。それはそれで、浮いちゃったなぁ」


「あぁ、だから栞って、万人受けするんだね。鍛えられてやんの」


そう茶化す西田さんに、栞ちゃんは、まるで子供を咎めるみたいに「西田っちぃ?」といたずらっぽく睨む。


「まぁ、だからわたし、中学ってみんなと浅すぎて、これと言って仲のいい人がいないんだよね」


仲良くなったのは葉由が初めて、って栞ちゃんが前に言っていたのは、そういうことだったんだ。


「でも今葉由がいるじゃん。栞には」


明るく笑い飛ばして、栞ちゃんの肩を叩く西田さんが、羨ましいって言っているように見えて、なんだか辛くなる。

「ちょっと葉由、そんな顔しないでよ!今回もさ、あたしハブられてるけど、どうせ一、二週間もすれば誰かが次のターゲットの悪口持ってくるか、なんかするから。それにのっかって、媚びへつらえば、もどれるし」


……わかんない。どうして?


「西田さんはそんなグループに戻りたいの?」


「……んー、だって、そこしか居場所ないから」


手に持つバイオリンの弓を指でこすりながら、西田さんはそう言った。


そして、顔を上げて私に問う。


「葉由はそういう経験ないの?」


不意を突かれた。

明らかに動揺する私を栞ちゃんも西田さんも見ている。


「……あ、えっと……小学生のときは、なかった」


二人は同時に首を傾げる。


「え、じゃあ中学はあったってこと?」


言葉を探して言い淀む。


でも、ふと。言ってみようって、なぜか思った。



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